ミラノにて展覧会/パフォーマンス
"文字の化石"
2023年10月9日ー10月16日
Palazzina dei Bagni Misteriosi/Teatro Franco Parenti
Via Carlo Botta 18, 20135 Milan, Italy
この個展とパフォーマンスは、Katia Bagnoli と Bruno Riva のキュレーションによるイベント "石に記す" の一環として開催された。
日々、数百億のデジタルメッセージが地球を飛び交っている。コミュニケーションが瞬時に世界を駆け巡るこの時代、我々は引き換えに何を失ったのか。デジタルメッセージとは異なり、手書き文字は書き手の個性ある顔となる。単なる文字情報だけでなく書き手の魂を乗せて運ぶ。活字の「ありがとう」はいつも同じだが、手書きの「ありがとう」には書き手の心情が宿る。何千年もの間、人間は手で文字を書き続けてきた。だが、時代は文字をペンで書くものからキーボードやタッチパネルで記されるものへと変えつつある。これは人間の歴史における劇的な転換である。手書きはこれからますます疎遠になっていくだろう。だからこそ今、手書きの原点に帰り、新しい視点から手書きを再評価する意義があるのではないか。
文字の原点、象形文字は古代の手書き文字であり、古代中国では骨や亀の甲、石などに彫られた。イタリアでは岩に絵文字が記された古代遺跡が見つかっており、イタリアで初めてユネスコの世界遺産に登録されたバルカモニカはその代表例である。中国の古代文字とイタリアの絵文字には多くの共通点が見て取れる。
この展覧会の作品は古代文字を素材としている。床いっぱいにキャンバスを広げ、墨を入れたグラスを手に裸足で画面に踏み込む。宙で円弧を描くとグラスの墨はパッとキャンバスに飛び散り、そこに未知の線と形が現われる。グラスを置くと、墨は生き物のようにキャンバスの上をさまよい、溜まる。後はただ待つのみ。幾晩かして墨が乾くとそこに不可思議な模様が残る。まるで目の前に文字の化石が現れたようだ。その瞬間、母なる大地は何千年の時を超えて我々にメッセージを送る。自分たちのために自然をコントロールするか、それとも自然のために自分たちをコントロールするのか。
個展 文字の化石
パフォーマンス