地球の化石
床いっぱいにキャンバスを広げ、墨を入れたグラスを手に裸足で画面に踏み込む。宙に円弧を描くとグラスの墨はパッとキャンバスに飛び散り、そこに未知の線と形が現われる。
グラスを置くと、墨は生き物のようにキャンバスの上をさまよい、溜まる。後はただ待つのみ。幾晩かして墨が乾くとそこに不可思議な模様が残る。まるで目の前に地球の化石が現れたように。その瞬間、母なる大地は何千年の時を超えて我々にメッセージを送る。
人間は大地が蓄えた炭素を燃やし続けてきた。
大地に眠る金を掘り続けてきた。
燃やされた炭素は産業のエネルギーになり、地球温暖化を引き起こした。
掘り出された金は財貨となり、富を象徴する存在となった。
そして地球は沸騰化し、貧富の格差は極まっている。
炭素も金も大地に還るべき時が来ている。